
ORAL DISASTER PREPAREDNESS
防災に、
お口の視点を。
阪神・淡路大震災——災害関連死で最も多かった疾患は、肺炎でした。
お口の防災プロジェクトは、災害時にも口のケアを続けられるよう、家庭の備えと地域で支える手順をまとめています。
公開中の実務資料とQ&Aは、いずれも学術統轄の監修前(起草版・暫定案)です。監修の状態は、資料・Q&Aごとに表示しています。
今日できる、家庭の点検
非常持出袋と自宅の備えに、お口のケア用品が入っているかを確かめます。
確かめる品目
- 歯ブラシ(非常持出袋に1本、自宅の備蓄に予備をもう1本)
- 口腔ケア用ウェットシート(水が使えないとき用)
- 洗口液または液体ハミガキ(ノンアルコールの携帯サイズ)
- 口腔保湿ジェル
- 紙コップと、お口のケアに使う水
- 入れ歯を使う方:ふたが閉まる保管容器・義歯用ブラシ・洗浄剤
- 点検日を年2回決めておき、液体の製品は購入日を書いておく
詳しい品目と数量(1人3日分)は、家庭向けチェックリストに載っています。
水が少ないときの工夫
洗口液でのうがい、口腔ケアシートでの拭き取り、少量の水での歯磨きなど、限られた水でもできるケア方法があります。洗口液は、口に含んだものを自分で吐き出せない方には使わないでください。乳幼児には使わず、お子さんが使うときは大人が見守ってください。
高齢者・義歯利用者は特に注意
義歯の紛失防止のため、就寝時は外して、ふた付きの容器に水を張って入れ、置き場所を毎回同じにしてください。口の乾きには、口腔用保湿ジェルをごく少量、薄く塗る工夫で楽になることがあります。塗る前に、前に塗ったジェルを必ず拭き取ってください。のどの奥や上あごの奥には塗らないでください。
保湿ジェルの使い方と注意(重ね塗りの危険)を読む飲み込みに不安がある方
飲み込みに不安がある方の食べ方・飲ませ方・姿勢は、その方の状態によって合う方法が変わります。ふだんの指示(主治医・歯科医師・言語聴覚士・介護職など)がある方は、そちらを優先してください。食事中にむせることが多いとき、食べられない状態が続くときは、救護班・保健師に相談してください。
家庭の備えについて、よくある質問
- 既存の資料をもとに再構成(監修前)
非常持出袋(防災バッグ)に入れておく歯科用品は何ですか
歯ブラシ、口腔ケアシート(歯みがきシート)、洗口液の小分け、口腔保湿ジェルが基本です。義歯を使う方は義歯用品も加えてください。
答えの全文と注意を読む - 既存の資料をもとに再構成(監修前)
入れ歯を使っています。何を備えておけばよいですか
ふたが密閉できる容器(水がこぼれないもの)、義歯洗浄剤、義歯用ブラシを備えてください。容器には油性ペンで氏名を書いておくと、避難所での取り違えを防げます。
答えの全文と注意を読む - 既存の資料をもとに再構成(監修前)
災害のときも歯みがきは必要ですか。ほかにやることが多くて後回しになっています
必要です。避難生活が続くと口の中の細菌が増えやすく、肺炎などの呼吸器の感染や口の中の炎症が起きやすくなると考えられています。完璧でなくてよいので、1日1回、寝る前だけでも続けてください。
答えの全文と注意を読む
地域・組織で取り組む方へ
家庭の備えと、地域の支援をつなぎます。既存の指針や地域の取り組みを、備蓄点検・教材・訓練で使いやすくするための資料を公開しています。
協働の構想(協議前)立場ごとの協働の内容(作業・期間・費用・担当)は、まだ決まっていません。いま受け付けているのは、公開中の資料を使う相談と、協働の進め方の相談です。
自治体(防災・保健・福祉の担当部署)
地域防災計画や避難所運営の手順に、お口のケアと口腔ケア用品の備蓄点検を加える進め方を相談できます。
歯科医師会・歯科衛生士会など、歯科医療職の方
公開中の教材を地域の啓発や研修で使う方法や、教材の内容についてのご意見を相談できます。
大学・研究機関の方
災害と口腔について、まだ分かっていないことを問いの形にした研究アジェンダを公開しています。共同検証の進め方を相談できます。
企業・団体の方
社員向けの口腔ケア用品の備蓄点検(BCP)や、協賛・連携の方法を相談できます。運営体制では、教材と統計の学術的な判断について、学術統轄が協賛企業から独立して判断する権限を持つと定めています。
学校・教育関係者の方
防災教育・保健教育の授業で使える教材(起草版)を公開しています。授業での使い方を相談できます。
報道・政策関係者の方
取材のご依頼や、政策の検討に使う資料・出典について相談できます。
取り組みの記録と、いま準備していること
これまでに公開したもの
いま準備していること
資料・Q&Aの学術監修準備中
公開中の実務資料とQ&Aは、学術統轄の監修前です。監修を経て、正式版に更新します。
お口の防災アドバイザー認定制度制度設計中
ベーシック(市民・多職種向け)、プロフェッショナル(医療従事者向け)、インストラクター(指導者向け)の3階層で設計を進めています。開始時期は決まっていません。
学術評議会(9分野)組成中
分野ごとの監修を担う予定の学術評議会の設置を進めています。
なぜ、災害時にお口のケアが必要か
「お口の防災」とは
お口の防災とは、災害時に口腔の健康を守るための備えと対応の総称です。口腔ケア用品の備蓄、水が少ない環境での歯磨き・清拭の方法、義歯(入れ歯)の管理、口腔乾燥・嚥下への対策などを含みます。口腔の健康管理を全身の健康管理の一部として災害時にも継続することで、持病の悪化や、細菌性肺炎・インフルエンザなどの感染症、誤嚥性肺炎を含む肺炎のリスクを減らすことを目的とします。一般社団法人日本オーラルヘルス協会「お口の防災プロジェクト」が提唱・推進しています。
災害関連死
災害関連死とは、建物倒壊や津波などの直接の被害ではなく、避難生活の身体的負担や環境悪化が原因で亡くなることをいいます。
- 阪神・淡路大震災(1995年)
1995年、日本で初めて「災害関連死」という言葉が用いられた震災。災害関連死のうち、単一の疾患として最も多かったのは肺炎(約24%)と報じられた。
出典:神戸新聞(足立了平, 日本プライマリ・ケア連合学会誌 2011 より)
- 能登半島地震(2024年)
災害関連死と認定された方は530人(石川516人・新潟6人・富山8人)で、直接死228人の約2.3倍です(2026年10月30日時点。認定は続いており、数は時点により変わります)。
出典:石川県 被害報 第234報(2026年10月30日)/新潟県・富山県の数は共同通信の報道(2026年8月31日)
最も多い死因は、災害や地域によって異なります。能登半島地震では、死亡の経緯が公表された158名の死因は、循環器系疾患(約34%)と呼吸器系疾患(約33%)が拮抗しています(令和6年11月21日時点、令和7年版防災白書)。また、災害関連死の認定数は、お口のケアで防げる人数を示すものではありません。
お口のケアと肺炎の研究
日本の特別養護老人ホーム11施設で2年間行われた比較試験では、看護・介護職による毎食後の歯みがきと、歯科医師・歯科衛生士による週1回の専門的なケアを組み合わせた群で、肺炎を発症した人が少なかったと報告されています(介入群184人中21人、対照群182人中34人)。
対象は介護施設で暮らす高齢の方で、災害時の避難生活や、家庭での歯みがきだけの効果を調べたものではありません。複数の研究をまとめた2022年のコクラン・レビュー(Cao ら)は、介護施設での専門的な口腔ケアが肺炎を防ぐ効果は、大部分がまだ不確かである(根拠の確実性は低い)と整理しています。
出典:Yoneyama T ら. J Am Geriatr Soc. 2002;50:430-433(先行報告:Lancet. 1999;354:515)/Cochrane Database of Systematic Reviews 2022(Cao ら)
公開中の資料と、監修の進み方
資料は「起草 → 学術監修 → 正式公開」の3段階で品質を管理しています。現在公開中の資料は学術監修前の「起草版(Web先行公開)」で、監修を経て正式版に更新します。
- 段階:起草済み(学術監修の前)
- 段階:起草済み(学術監修の前)
ご家族・介護者
高齢者・介護者向け 備えガイド - 段階:起草済み(学術監修の前)
行政担当者
自治体向け 導入ガイド - 段階:起草済み(学術監修の前)
- 段階:起草済み(学術監修の前)
教育関係者
学校向け 防災教育教材 - 段階:起草済み(学術監修の前)
企業・団体
企業向け 連携ガイド
すべて無料で、Webで読めて、印刷・PDF保存もできます。学術監修の完了後、正式版に更新します。
学術面の責任者と、資料ごとの監修状態

学術統轄
中久木 康一
東北大学 大学院 歯学研究科 災害・環境歯学研究センター 特任講師
学術統轄は、統計の引用・教材・公式見解について学術面の責任を負います。個々の資料やQ&Aが監修済みかどうかは、各ページの表示で確認できます。現在公開中の実務資料・Q&Aは、いずれも監修前の起草版・暫定案です。
学術統轄の経歴(個人の実績)
- 東日本大震災後の被災地で8年間・平成28年(2016年)熊本地震後の被災地で3年間、地域歯科保健の再構築に従事
- JDAT(日本災害歯科支援チーム)研修会の構築と展開を主導(2018年〜)
- 厚生労働科学研究費補助金「大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究」研究代表者(平成19〜21年度)
- 『災害歯科医学』(医歯薬出版)共編
代表発起人の言葉
次の大災害が発生したとき、すべての家庭の防災袋に口腔衛生用品が自然に備えられ、すべての避難所に歯ブラシがあり、病院や介護施設、在宅避難や車中泊の方々のもとにも口腔ケアが届き、すべての自治体に口腔の健康を守る担当者がいる。そのような社会を、私たちは今から準備しておかなければならない。
一般社団法人日本オーラルヘルス協会 代表理事/お口の防災プロジェクト 代表発起人・プロジェクト統轄 富田 大介(決意表明より)
決意表明の全文を読む